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【感想・レビュー】三浦綾子著:塩狩峠

2015年08月02日

旭川に向かう峠で一人の鉄道員が電車の下敷きとなって死亡した。
その青年の死は、単なる事故や自死ではなく、大勢の命を救うための死だった。


塩狩峠を一言で説明すると、上記の内容ですが、こんな短い文言で語れない物語です。

私が「塩狩峠」を知ったのは、高校1年の夏。

ずっとイジメられ仲間外れにされていた日々で、

自分は何のために学校に来ているのだろうか?
これから、何のために生きていけばいいのだろうか?

と思っていた時、
図書館で会った先生にお薦めの本がないかと聞いたところ、
この本なら何か見つけられるかも?と薦められたのです。

衝撃でした。


塩狩峠の著者:信仰の三浦綾子さん



著者は三浦綾子さん。

三浦綾子さんは13年間の闘病中にキリスト教に入信しました。
奇跡的に回復した後、朝日新聞の懸賞小説に応募して「氷点」が入選し、
その後、次々と「人が生きる」ことを訴える小説を発表した人です。

塩狩峠の主人公「永野信夫」は、実在の長野政雄さんが
暴走する列車に身を挺して止めた話を基に、
独自の視点から新しい内容で書かれています。

あとがきで、長野政雄さんに関する資料が少なく、
親族も残っていないと書かれていましたが、
その頃「自分の生きた証を残す」小説を読んでいたため、
自らの生きた記録を残さないという生き方が潔く感じたものです。

最後にポケットから血がついた遺言書が出てきた場面を読んで、
私も早速、遺言書のような家族に宛てた手紙を書き始めて悲しくなってしまいました。

明治時代の設定のためか、著者の三浦綾子さんが学校の先生だったためなのか、
言葉が固く感じられて難しかったのです。

それが、読み進めるにつれて、その固さが主人公の「永野信夫」のまじめな性格の表れだと感じられてきました。


塩狩峠の中の心に残ったエピソード



学校に幽霊が出ると言うので、みんなで、見に行こうと約束したものの、その晩は雨。

行くのが面倒になっていた信夫は、父親に諭されて渋々出かけたところ、吉川という友人だけが来ていました。
吉川はみんなが来ないことを責めもせずに「約束だから」と信夫に語る場面では、
私なら行かずに、行かなかったことを正当化する言い訳を探すか、
親に怒られて渋々出かけても、さも自分は当然のこととして約束を守ったと
偉そうにするかのどちらかだろうと恥ずかしい想いに囚われて、
吉川のような心を持ちたい、そのためには何をすればいいのか考えてしまいました。

始めて読んでから数十年。何度も読み返しているうちに、
そんな崇高な想いは消えていき、スレてきている自分を感じます。


賛否両論のラスト



ラストの信夫の行為は、ようやく結婚が決まった婚約者を残して死ぬなんて身勝手だとか、
もっと他の方法があったはずだと感じる人もいらっしゃるようで賛否両論。

それは、どんなものにもあることですが、私は塩狩峠を読んで、
「仲間外れにされても、自分が間違ったことをしていなければ、それで良い」と思えるようになり救われました。


この夏、読んでみてはいかがですか。


塩狩峠 (新潮文庫)


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